【内田和典さんインタビュー】続けていれば、必ずゴールにたどり着く マラソンランナーの持続可能な受験生活

【内田和典さんインタビュー】続けていれば、必ずゴールにたどり着く マラソンランナーの持続可能な受験生活

【第3回 試験は自分の経験なんて聞いてない 知ったかぶりをやめてつかんだ合格】
過去の記事:第1回第2回

食品メーカーに新卒で入社して以来20年以上を商品開発職として過ごし、協力会社とのつきあいから中小企業診断士を目指すようになったという内田和典さん。毎朝のランニングを欠かさないマラソンランナーとしての顔も持つ。第3回目、最終回となる今回は、2次試験合格のキーとなった解法書との出会い、そして中小企業診断士としての今後についてお話をうかがった。

秋葉原で出会った解法書で 「知ったかぶり」の解答から脱却

2019年1次試験に合格した内田さんは、一度目の2次試験を受験する。

「2次試験はなんとかなるだろうという気持ちでした。過去問を解いて、自分なりにやれば受かるんじゃないかと考えていました」

しかし結果は不合格だった。一度目の不合格の原因はなんだったのだろうか。

「当初は模範解答を読んでも、なぜその答えが正しいのかわかりませんでした」と内田さんは語る。

「本業の商品開発でマーケティングの経験が少しあったので、余計な知識があった。余計な知識で知ったかぶりの回答をしようとしていて、だから落ちたんだと思います」

中小企業診断士の2次試験では、自分の本業に近い分野や予備知識がある分野の事例ほど難しいという話も耳にする。内田さんは、秋葉原の書店である解法書と出会ったことで、知ったかぶりの解答から脱却できたという。

試験では「自分の経験なんて誰も聞いていない」 気づきから「素直に」を実践に

そもそも内田さんは商品開発職としての経験が豊富だ。商品開発でのアイディア出しでは、できるだけ離れたアイディアを結びつけたり、突飛な発想をしたりするほうが面白い。内田さんもそんなふうに考える癖がついていた。しかし解法書に「自分の経験なんて誰も聞いてないよね」と諭されたことで、それからは素直に考えるようになったという。

「余分な知識は意識的に排除して、素直に与件文を読む。与件文に散らばっている情報をまとめて、素直に1次試験の知識を使って解答する」ことを心がけた。

素直に与件文を読むことは受験生の間で「与件ファースト」、「与件に寄り添う」といった言葉で語られることがある。2次試験の受験生に普遍的に求められるスキルである一方で、それだけ実践することは難しいのだろう。解法書の存在があったとはいえ、内田さんが「素直に」を実践できたのには、そこに至るまでに散々迷ったことも大きいという。たくさん悩み、迷い、試行錯誤を繰り返した結果として気づきがあり、その気づきをもとに意識的に行動を変える。それが可能だったのは内田さん自身がとても素直な人柄であったからだろうと感じた。

そして挑んだ2回目の2次試験。当初は模範解答を読んでも、なぜその答えが正しいのかわからなかったという状況から一転、見事に合格を手にしたのである。

外の世界を知ったことで 自社に留まりながら活動の場を広げることを選ぶ

2023年10月に正式登録し、実務補習の指導員の先生との縁もあり、東京都中小企業診断士協会城北支部に入会したという内田さん。今後についてはどのように考えているのだろうか。

「実は、本業へのモチベーションが落ちてしまった時期があって、その頃に中小企業診断士として正式登録をしていたら転職していただろうな、とは思うんです。だけど、今は転職はないかな」

内田さんは現在、入社以来長年携わってきた商品開発の職は離れ、原料となる香辛料などの調達を担当しているという。

「自分は新卒で入社して、それからずっと今の会社にいるので、外の世界を知らなかったことに気づきました。実務補習で他社をみて、すごく視野が広がりました」

だからこそ、当分は企業診断士として過ごすつもりなのだという。今後も、苦手意識から反復練習を続けた財務・会計についてはまだまだ勉強を続けたい。受験生時代は一人で孤独に勉強したので、これからの人脈作りを意識して活動を始めている、未来を語る内田さんの表情は晴れやかだ。








豊田 ようこ

豊田 ようこ 取材の匠メンバー、中小企業診断士
茨城県出身。東北大学大学院生命科学研究科修了。7回の転職で一次産業、二次産業、三次産業を経験。現在はメーカーの品質保証職として社内教育やISO9001関連の業務に従事。2024年4月中小企業診断士登録。茨城県中小企業診断士協会所属。趣味は読書と刺しゅうと日本舞踊。

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