
分譲住宅会社の広報・広告担当として活躍後、現在は広告代理店でライティングを担当する柴山賢二さん(53)。企業の強みを言語化し、訴求力のある広告づくりに定評がある。中小企業診断士としてどのように羽ばたいていくのか、将来のことを語った。
中小企業診断士試験で得たことを生かす
広告代理店でライティングを担当する柴山さんは、広告内容の打ち合わせでお客様の会社に訪問することが多い。会議中に、ふと気付くことがある。
「『この問題が起きるのは、組織構造が要因だ』、『担当者に権限委譲すれば、意思決定が迅速になるのに』など、一歩引いた視点で分析するようになりました」。この5年間勉強したことが、いつの間にか自分の血肉になっていることに気付いた。
独立を視野に入れたのは、この時からだ。中小企業診断士の資格を取得したことで、新たな視界が開けた。
「中小企業診断士を取れていなかったら、独立は考えなかったでしょうね」と言う。合格までにかかった時間は短くない。しかし、大きく羽ばたくためには必要不可欠だった。
自分の経験を生かせる業界で
自分の進むべき道は見えている。独立しても、慣れ親しんだ広告業界から離れるつもりはない。中小企業診断士とライティングスキルでシナジーを生むことができるとわかっているからだ。
従業員50人ぐらいまでの規模であれば、広告担当を置いていない会社が多い。そこで広告担当を置くかどうかで、その会社がもう1回成長できるかどうか決まってしまうと言う。「自分は企業が脱皮して、成長する手伝いをしたいと思っています。できることなら、広告担当の育成にも携わっていきたい」。広告担当者として過ごした、過去の自分を重ねているのだろうか。
広告代理店の立場では、広告やホームページを作ることが決定している状態から話を聞くことが多い。
「せっかく中小企業診断士になったのですから、もう一段上の階層から支援をしていきたい。経営戦略の段階からコミットできれば、『今は広告を打つよりも、商品の見直しをしましょう』とか言えるじゃないですか」。合格までの道のりで得た知識を、いつでも駆使できる準備はできている。
仲間から得た刺激
中小企業診断士に合格して得たことは、まだある。受験生支援団体「タキプロ」で出会った仲間たちだ。支援団体の中ではもっとも所属メンバーが多く、同期は200人程度だったと言う。
「例えば、タキプロで一緒に活動した石川県在住の中小企業診断士から、能登半島地震後の町が復興し始めたフェーズで『ぜひ石川県に来てください』と呼びかけがあったんです。すぐに仲間と訪問することを決めました」。金沢市内を案内してもらい、充実した時間を過ごした。
「共に活動する仲間が、日本中にいると思うと心強いですよね」。これまでは県内でのつながりが中心だったのだが、一気に全国に広がった。
「中小企業診断士は独占業務がないからなのか、横のつながりが強い」と言う。本来はお互いがライバルであるはずなのに、それぞれ専門性が違うので競合にならない。それどころか、自分が知らない分野でも、相談相手になってくれることさえもある。ネットワークを構築できたことは大きな自信となった。
飛び立つ準備を
「仲間の中には、すでに独立した中小企業診断士も居ます。面白いことに、準備万端でないまま独立した人も少なくないんですよ」。後押しされたようだった。迷いが吹っ切れた。
一歩を踏み出すべく、開業した。
屋号は『オフィスリンテ』だ。文章を書く能力を意味する“リテラシー”に、誠実に仕事をするという意味のインテグリティを組み合わせた。自分の強みを表す造語だ。
柴山さんの前には、新たな世界が広がっている。

中島 正浩 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1978年長野県生まれ、下條村在住。大学院生命環境科学研究科を修了後、スタートアップ数社を経て、飯田市内の情報通信業に勤務。新卒以来、一貫してIT畑を歩んできたが、中小企業診断士としての幅を広げるべく、総務・経理担当として修行中。デジタルスキルを強みに、中小企業の課題解決にあたる。2022年中小企業診断士登録、長野県中小企業診断士協会所属。ほかにITストラテジスト、農業経営アドバイザーなど。趣味はカメラ。