【第2回 中小企業診断士試験への挑戦と成功】
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第1回は、製薬会社での経験を経て中小企業診断士を目指す岩水さんを紹介した。今回は、彼の受験生としてのチャレンジについて語る。
独学による試験への挑戦
岩水さんが中小企業診断士の勉強を始めたのは53歳の時だった。次のキャリアオプションとして中小企業診断士を選び、会社内でも役立つと考え、独学で挑戦することを決意した。彼はオークションサイトで中古のテキストや過去問を購入し、コストを抑えながら学習を進めた。特に資格学校の一年遅れのテキストを手に入れ、それを活用して学習を進めた。
彼が編み出したのは、1次試験・2次試験同時勉強法だった。1次試験の中で2次試験に直接関係する科目、すなわち企業経営理論、財務・会計、運営管理の3科目に重点を置き、1次試験と2次試験を同時に勉強する方法だ。2次試験の勉強を通じてわからない部分を1次試験のテキストで補い、1次の試験問題にも取り組む。この戦略では、3科目で80点を目標とし、他の科目は最低限の点数を目指した。経済学・経済政策や経営情報システムなどの科目は50点、中には足切りギリギリの40点が取れればよいと考え、重点科目に集中する方針を採った。
財務・会計は彼にとって特に難関だった。苦手意識を持ちながらも、最初から取り組む姿勢を貫いた。しかし、理解できない部分は潔く切り捨て、解ける部分に集中することにした。このアプローチにより、無駄な時間を避け、効率的に学習を進めることができた。
2次試験で一番重要なのは、聞かれたことに答える力
2次試験に対する岩水さんのアプローチには、国語力としての記述力が重要だという認識があった。模範回答と自分の解答を比較し、精度を高める対策を行った。「2次試験で一番問題なのは、聞かれたことに答える力だと思う」と彼は述べる。設問に対して正確に答えるトレーニングを積み、独学でも2次試験のエッセンスを掴んでいった。
さらに、彼は「春秋要約」というトレーニングを取り入れ、日経新聞の春秋コラムを40字に要約することで文章の本質を掴む力を養った。毎日このトレーニングを欠かさず行い、設問に対して正確に答える力を身につけた。このスキルの重要性は、現在も資格学校が開催する模試の添削講師の仕事を通じて再認識しているという。多くの受講生が設問に正確に答えていない答案を見て、「与件文をちゃんと読み取ってないな」とか、「問題文の意図をちゃんと読み取ってない人が多い」と感じることが多いそうだ。一方で、読み取れている人はちゃんと答えを書けていると彼は言う。2次試験ではこのスキルが重要であると強調する。
1次試験合格と、2次試験不合格。そして、再び2次試験に向かう
2021年の夏、岩水さんは初めて1次試験を受験し合格したが、2次試験では不合格となった。「実はそこでやめようかと思った。本気で1回で受かるつもりでいたんです。でも、最後でこけちゃって」と振り返る。
2次試験の不合格後、年明けまでは何もしなかった。しかし、そのタイミングで資格学校の無料セミナーに出席し、「やっぱり中小企業診断士はおもしろい」と感じ、再挑戦する決意を固めた。
2回目の2次試験
次の2次試験に向けては、独学だけでなく資格学校の通学と通信教育を併用する戦略を取った。2次試験の与件文のマークの仕方や様々な人の勉強法を取り入れ、自分なりの最適な方法を見つけ出した。岩水さんの独自の勉強法は生きており、資格学校の模範解答を分析し、模範解答のキーワードがどことリンクしているのかを理解するために全社分を徹底的に比較した。並行して通信教育の2次試験講座も受講した。2回目は、独学に偏らない盤石な勉強法を探した、やれることは全部やるという戦略に切り替えたのだ。実際、周囲の人にやり方を聞いたり、資格学校の話を聞いて、解答法に工夫を重ねた。例えば、与件文へのマーキング、模範解答との比較分析などだ。2次試験に関わる多くの情報を取り込み、効率を最大限に高めることで対応しようとした。この取り組み方にも、彼独自の勉強の工夫が生きている。

保科 彰治 取材の匠メンバー、中小企業診断士
ITシステム開発の技術者。エンベデッドシステムスペシャリスト。印刷業、食品EC、飲食業の経営支援経験あり。音声・画像処理、プリンター関連のソフトウェア開発・製品サポートに豊富な経験を持つ。趣味は体を動かし、その動きを探求すること。