【第3回 模索、そして絞り込みへ】
過去の記事:第1回、第2回

3回の受験を乗り越え、中小企業診断士登録から2024年4月で3年になる加藤裕之さん。この3年間の間に様々な接点を作り、自ら動いて機会を作ってきた。最終回となる今回は、加藤さんが中小企業診断士の世界でどのように「自分の居場所」を見つけ出そうとしているのかに迫る。(以下、敬称略)
「自分はこれで行く」に向き合う
「中小企業診断士に独占業務がないというのは、見方を変えれば様々なことに取り組むことができるということ。無限の可能性があるところが魅力」
独占業務がある士業は、独占業務という枠、クライアントの固定観念をどう取り払うかで苦労している。一方で、中小企業診断士は自由度が高いだけに、自分のブランディングに苦労する人も少なくない。この3年間で多くの中小企業や中小企業診断士と接点を持つ中で、中小企業診断士の可能性や醍醐味を感じながらも、「自分はこれでいく」というものが必要なことをひしひしと感じている。
思えば、前職では自分自身のブランディングなどということは、強く意識する必要もなかった。社内では、黙っていても役割は与えられ、公式にも非公式にも誰がどういう人間かは自ずとわかった。協会では、「人脈形成が大事」という声をよく耳にする。だから、色々な場所で接点を作り、どんな人間かを知ってもらうようにしている。クライアントに対しても、「なぜ、あなたの支援を受けるべきなのか」に答えられる中小企業診断士でありたい。
「国家資格をとった者の責任」
あるセミナーで耳にした講師の言葉が耳に残った。
「資格をとったのに活かさないのは許せない」「試験に落ちている者もいる中で、受かった者には責任がある」
志があって中小企業診断士になったわけではない加藤だったが、これをきっかけにじわじわと、「自分にとっての中小企業診断士とは何か」を意識し始めるようになった。
一つの発見があった。プロコン塾で和菓子屋の経営改善に取り組んだ時のことである。
その和菓子屋の高齢の経営者には後継者がいたが、事業承継に向けた取り組みはなされていなかった。そこで、加藤は一緒に経営改善に取り組んだチームのメンバーと議論し、経営改善計画の中に盛り込んだ。
「事業承継で悩みを抱える経営者が多く、自分もお役に立てる機会があるのではないか」
そう感じとった加藤は、本格的に事業承継を勉強してみたいと思うようになっていた。
新たなチャレンジ
2024年6月から10ヶ月間の事業承継をテーマとしたマスターコースを受講している。事業承継は、困っている人が多くいるが、自分には経験のないフィールドだった。だが、これと思ったら、すぐに行動できるところが加藤の強みだ。「何もしなければ何も起きない」口ぐせのように加藤は言う。行動して、違う世界が見えてきたら、調整してまた行動する。
実は、中小機構の国際連携支援専門員の仕事に応募した理由は、中小企業診断士としての活動の幅を広げるための新たな機会や情報を得るという目的以外にもある。前職では海外駐在の経験もあり、国際連携に興味を持っていたためだ。興味のある国際展開において、たくさんのノウハウを得ることができるという意味では、貴重な経験になっている。
「2次試験に合格した後、2次試験対策専門校のブログを書いたことで模試の添削や作問につながった。事業承継のマスターコースで学ぶことや国際連携支援専門員の仕事も次につながっていくと思う。自分から動いていくことでフィールドが広がっていく。その中で自分はこれでいくというものを見つけたい」
チャレンジし続ける加藤。その先には絞り込みを経て、「自分はこれでいく」が見つかるに違いない。

前田 浩光 取材の匠メンバー、中小企業診断士
“共感経営”ナビゲーター。社員・ステークホルダーの共感を呼ぶ経営をナビゲート。大手製造業で主宰した多数の小集団活動プロジェクトで、品質・生産性向上を実現。何よりもメンバーが変容し、生き生きと成果に結びつける姿に感動したことが、中小企業診断士を志すきっかけに。(公財)日本生産性本部のコンサルタント養成講座を修了し、2023年4月に独立開業。“共感経営”を実践する企業を一社でも多く生み出すことを目標に活動。