
旧制度の1次試験合格から20年を経て2次試験を勝ち取った小松さん。合格後の精力的な活動や人々との出会い、そしてこれからの夢について紹介する。
合格後の覚醒
最大限できる対策を行って迎えた2020年10月の2次試験当日。高得点で貯金をねらっていた事例Ⅳでは時間切れで全問解答がかなわず、正直これは受からないだろうというあきらめの境地へ。試験結果について特に意識することもなかったため、ふたを開けたら合格していたときは喜びというよりも驚きの感情が大きかった。あわてて口述試験のために事例を読み直し、一通りの想定問答を組み立てて受験。無事合格を勝ち取ることができた。「もしあのとき受かっていなかったら、また1次試験からやり直そうという気にならなかったと思う」。妻からのリスキリングのすすめで奮起し、短期間でもできることをやり遂げて手にした成果はのちの充実した診断士活動につながっていく。
合格後に早速協会の15日間の実務補習を経て東京都中小企業診断士協会に登録。補習時の指導員から紹介されたフレッシュ診断士研究会への参加に続いて、さらなる交流を求めて東京協会の複数の研究会にも参加。2022年6月にひと月にわたる入院生活を経験するも、復帰後はプロコン塾でよりスキルに磨きをかける。2023年からは東京協会に加え、埼玉県中小企業診断士協会にも入会。現在は合計で10以上の研究会やプロコン塾に名を連ねている。
楽しさが原動力
積極的に中小企業診断士としての活動の場を広げてきた小松さん。「勇気をもらえるんです」。一つの会社に30年近く勤めキャリアを積んできた中で、様々なバックグラウンドを持つメンバーが活躍している中小企業診断士の世界での出会いはとても新鮮で思考の幅が広がる気づきの連続だった。70歳、80歳の大ベテランの先輩方の精力的な活動を目の当たりにして、自分の将来を思い描く時に大きく広がる可能性を感じている。
実務補習でお世話になった指導員に声をかけられ、実務補習の副指導員を経験。さらに、実務従事の指導員としての勧めを受ける。立場が180度変わることによる不安や戸惑いがあったが、何事も挑戦と思い、これまでに2回ほど指導員を務め、教える側としての別の困難さも経験した。教わる側、教える側それぞれのチャレンジを経験する中で常に感じていたのは「楽しい」という実感。それは新しいことを学ぶことであり、新しい仲間とつながることからくる心の底からの言葉だった。
夢は地元への還元
地元の山形で農業を営む両親は高齢となって健康状態が懸念されるようになり、おのずと気持ちは故郷へと向かう。いままで経験してきた企業支援のスキルを地元山形へ帰って役立てたい。「その時にそなえて今のうちに様々な研究会に参加してより幅広い経営知識と経験を積むと同時に人脈を広げていきたい」。地方の中小企業が直面する課題に向きあい、経営改善や再生支援で地域を活性化することがこの先の夢である。
社会貢献につながっているという実感を持ちたいと現在の金融機関へ入社を決めた小松さん。診断士資格の取得後は資金繰りや融資といった業務知識に加え、より多角的な中小企業診断士の視点を活用して、具体化してきた夢の実現に少しでも近づこうと自己研鑽を続けている。中小企業診断士の仲間とのつながりの中で、意欲的に活動している大ベテランの先輩方や仲間の姿を自分の将来に重ねている。
受験生へのメッセージ
「旧制度で1次試験に合格してから20年もたって2次試験を受けた自分の体験はとても珍しいケースで、受験対策という意味では有効なアドバイスをすることは難しい」小松さんは前置きをいれてから、「自分が強調したいことは、『中小企業診断士になったことで素敵な出会いがあり、自分の世界が広がった、ということ。そして中小企業診断士になれて一番よかったと思うのは年齢に関係なく意欲的な方々が数多くいることでとても刺激を受けること』。そういった合格後の世界の広がりに思いを巡らせ、目標とすることで日々の勉強に向きあい、あきらめずに合格を勝ち取ってほしい」と人を包み込むような笑顔で締めくくった。

菅野 靖雄 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東京都在住。大手電気メーカーの事業部門で経営管理業務を長く勤め、海外駐在経験も豊富。業務経験の体系化を目的に2023年度の中小企業診断士2次試験に合格。企業内診断士としての活動を通じ中小企業診断士ネットワークを拡大中。