【第3回 尽きることのない挑戦の意思】
過去の記事:第1回、第2回

大学の研究室から企業の経営企画へ。理系の素養を強みとして、数字と論理を武器にキャリアを築いてきた岸田誠史さん。最終回となる第3回では、資格取得を新たな出発点と捉えたこれからの挑戦についてうかがった。
2次試験を一発合格!
岸田さんは、中小企業診断士試験の2次試験で全事例A判定を獲得し、事例Ⅰが72点、事例ⅡとⅢが60点、事例Ⅳが68点という高得点で見事一発合格を果たした。この結果について「自分の戦略は間違っていなかったことが証明できて、とてもうれしかった」と語る。
1次試験では独学から通信講座へと切替え、2次試験では再び独学スタイルに戻すなど、状況に応じて柔軟に戦略を変更。そのうえで、ほかの受験生の成功体験ブログなどから有益な情報を取捨選択し、自分なりの答案づくりに徹したことが合格につながった。
学習時間は、1次試験で約500時間、2次試験では2か月弱の間で150時間程度であった。平日は2時間、休日は4~5時間と、平均して1日3時間ほどのペースで学習を継続。特に2次試験では、実際に手を動かして論述することが多いため、長時間の勉強は避け、効率を重視した短時間集中型の学習スタイルを採用した。集中力を保つための環境づくりにも配慮し、自宅では気が緩んでしまうと感じていたことから、自習室を借りて勉強に励んだ。
通学スタイルではなかったため、ほかの受験生との人的ネットワークが築けなかった点には多少の心残りがあるという。しかし、限りのある時間の中でやるべきことを見極め、着実に成果を出した姿勢は、多くの受験生にとって参考になるだろう。
広がり続ける挑戦のステージ
岸田さんにとって中小企業診断士の資格は、学びを深め続けるための新たな一歩にすぎない。中小企業診断士の資格取得を目指した理由はスキルアップであったが、「スキルアップが完了したとは考えていない」と語る。試験勉強で得た知識は確かに本業に活用できているが、実務への十分な落とし込みはこれからだという。
資格取得後も、学びへの意欲は尽きることがない。今後は、要因分析やデータ処理に欠かせない統計的思考を強化し、経営企画やFP&A(財務計画・分析)などの現場で、数字を根拠とした判断力をより一層高めたいと考えている。
また、対人スキルも身につけるべき重要な要素と捉えている。コーチングや営業のように、人の話に耳を傾けて信頼関係を築きながら支援していくスキルには、まだ十分に自信があるとは言えないからこそ、少しずつでも経験を積み、実践を通じて磨いていくつもりだ。
一方、プライベートでは、いつか新しい趣味としてサックス演奏に挑戦したいという夢がある。夜の街角で響くジャズの音色に、どうしようもなく心が揺さぶられる瞬間があるのだという。
「自分もあのように成熟していくのが理想」と、岸田さんは静かに思いを口にする。
岸田さんからのメッセージ
最後に岸田さんから、中小企業診断士を目指す方へのメッセージをいただいた。
「中小企業診断士を目指す理由は人それぞれですが、学んだことは決して無駄にはなりません。どんな形であっても、必ず自分の力になります。だからこそ、挑戦する価値は十分にあると思います。ありがたいことに、先人たちが積み重ねてきた知見が数多く残されており、今こうしてこの記事を読んでいること自体が確かな一歩だと思います。ほかにも役立つ情報は数多くあるので、自分から積極的に取りにいき、周囲の人の力も気兼ねなく借りていくとよいでしょう。私自身は当時そこまで考えていませんでしたが、中小企業診断士としての今後の活動を見据えるなら、中小企業診断士の学習を通して、人とのつながりも意識しておくことをお勧めします」
中小企業診断士の学びは知識だけでなく、人とのつながりを築くことも含まれている。論理と思考で道を切り拓きながらも、どこかロマンを忘れない岸田さんらしさが言葉の端々に感じられた。

西晃 取材の匠メンバー、中小企業診断士
東京都在住。早稲田大学第一文学部中国文学専修を卒業。独立系SIer(現・総合商社系SIer)で17年間勤務後、中国資本IT企業に転職。20年以上にわたりERP関連業務に携わる。2024年11月に中小企業診断士として登録し、東京都中小企業診断士協会城西支部に所属。保有資格は全国通訳案内士(中国語)、ITコーディネータ、情報処理技術者(PM、DB)など。2014年に中国全省制覇、2023年に日本全県制覇を達成した旅好き。
