【第1回 試行錯誤の1次試験。やってきたことが報われた瞬間】
輸送用機器メーカーで研究開発をしながら養成課程に通学し、2022年に中小企業診断士登録をされたH.S.さん。中小企業診断士登録までにはどのような奮闘があったのでしょうか? 第1回は中小企業診断士を目指したきっかけと1次試験合格までの奮闘をうかがいました。
現状に対する漠然とした不安
――現在の業務について教えてください。
輸送用機器メーカーで、次世代商品を構成する部品の研究開発業務に携わっています。
――研究開発職で中小企業診断士を目指されたとは珍しいですね。きっかけは何だったのですか?
同僚が中小企業診断士を目指していて興味を持ちました。今の業務をしている中で「会社経営に対する知見を全く持たずに、このまま技術の仕事だけをやり続けていいのだろうか?」という不安を感じていました。ちょうどその時、同じ悩みを持った同僚が中小企業診断士を目指していることを知り、「経営の基礎知識を身につけることができる」と思い、勉強を始めました。
手探りだった初受験
――そこから1次試験合格までには何年かかりましたか?
3年かかりました。
――そうなんですね。どのように勉強されたのですか?
1年目は正直、試験のことがよくわからず“診断士試験の入門編”のような本で勉強をしていました。それで試験当日、会場に行ったら、周りの受験生がiPadを見ているのを目にして「全然違うじゃないか」ということにまず気づかされました。
――衝撃的でしたか。
はい。それでも、もともと知見があった企業経営理論と経営情報システムでなんとか科目合格することができたんですけどね。そこから本質的な2年間につながっていきます。
苦労して手に入れた1次試験合格
――2年目からはどのように勉強されたのですか?
まずは一緒に受験した同僚に、どうやって勉強したのかを詳しく聞きました。そうしたら受験予備校の「クレアール」を教えてもらって。そこのテキストと問題集をやったのが2年目と3年目でした。ただ2年目は時間が作れず、5科目中、得意としていた運営管理と中小企業経営・政策の2科目だけ合格しました。3年目は逆に経済学・経済政策、財務・会計、経営法務の不得意な3科目が残った形になってしまったので、1次試験をどう受けようか、凄く悩みました。
――確かに。悩ましいですね。
「3科目だけ受験するのがいいのか」「得意な科目をもう1回受けた方がいいのか」と凄く悩んで、結局は不得意な3科目に絞って受験することにしました。「ここで合格しないと、1度合格した科目をまた受け直さなきゃいけない」ということもあって、プレッシャーが凄かったですね。あと、家族にもかなり不便をかけていたんですよね。資格試験の勉強を理由にあまり家族サービスができていなかったので、「なんとしてでもここで結果を出さないといけない」と思ったんです。
――まさに背水の陣ですね。
そうですね。ですので、とにかくクレアールの「非常識合格法」という勉強法で経済学・経済政策、財務・会計の勉強をしました。経営法務は毎回足切りラインの40点以上は取れていたので、もう天に任せようと思いました。
――それで、結果はどうだったんですか?
1日目の経済学・経済政策と財務・会計の試験終了後に自己採点をしたら、経済学・経済政策が80点以上、財務・会計も70点ぐらい取れていました。その時点で「これは行けたな」って思ったんですね。あの1日目の終わった後が忘れられないんです。「今までやってきたことが報われたんじゃないか」って。2日目で失敗するパターンもあるかもしれないですが、1日目のあの感覚はやっぱり忘れられないですね。2日目の経営法務も結果的に60点ぐらい取れていました。
飯高 麻由子 取材の匠メンバー、中小企業診断士
福島県出身・福島県在住。2022年中小企業診断士登録。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。大学卒業後、金融機関に勤務。現職では事業承継や遺産整理といった相続関連業務に従事し、中小企業診断士と1級ファイナンシャル・プランニング技能士両方の知識をフル活用中。趣味は旅行、ドライブ、Twitter。