【第1回 挑戦の始まり~「多くの経営者の話を聞きたい」】

「経営者に寄り添って自分なりの価値を提供したい」。地方銀行に長く勤務し、取引先の企業経営者と話をする中でその思いを募らせていた菊池宏行さんは、その実現のために中小企業診断士を目指すことを決めた。しかし、合格後、順風に活動ができたわけではなく、仕事の関係で資格休止も経験している。資格再開を経て、経営コンサルタントとして新たな一歩を踏み出す菊池さん。第1回目の今回は現在の仕事と中小企業診断士受験に至るまでの経緯について語ってもらった。
地方銀行で幅広い金融業務を経験
菊池さんは現在、新潟県の地方銀行の東京営業本部に勤務している。東京営業本部は新潟以外の支店を管轄しており、北は札幌から南は大阪まで担当範囲は広い。主な業務は営業推進支援。各支店や取引先とM&A事業社との橋渡しや、プライベート・エクイティ・ファンド(非上場企業の株式を取得し、企業価値を高めて収益化するファンド)案件の取り次ぎなどを担当している。
もともと新潟県の出身で、東京の大学に進学したが、就職にあたって地元にUターン。現在の銀行に新卒で入社し、以来32年間勤務している。銀行員生活の約3分の2が本部の業務、残りの3分の1は支店の法人営業に携わってきた。支店の営業支援から、国際業務の企画、商品企画、有価証券の運用から為替のディーラーまで、およそ金融と名の付く業務は幅広く経験した。
多くの企業経営者に会って話を聞いてみたい
入社してからしばらくは本部の企画部門に所属していた。仕事に不満はなかったが、満ち足りないものを感じ始めていた。
「地域には多くの中小企業があり、悩みを抱えている経営者も多くいらっしゃいます。せっかく地方銀行に入ったのだから、もっと多くの経営者と会い、悩みを聞き、役に立ちたい。自分なりの価値を提供したいと思うようになりました」
多くの経営者に会って話を聞けるのは営業部門が最適だ。菊池さんは法人営業部への異動を希望し、ほどなくして希望がかなえられる。ただ、入社以来ほとんど企画畑で、営業の経験はない。異動直後は不安も大きかった。
「財務や金融に関しては専門分野ですが、地域の企業の悩みはそれだけではありません。様々な悩みや相談に的確にアドバイスし、自分がお客様にとって本当に役に立つ存在になるためには、専門分野以外の幅広い知見や知識が足りないのではないかと思いました。それを補うためにいろいろ考えて調べた結果、たどり着いたのが中小企業診断士です」
中小企業診断士受験を決意
勤めていた銀行は業務に役立つ資格として中小企業診断士の取得を奨励していた。社内には資格保持者も多くいたので、資格のことは前から知っていた。
「税理士や社会保険労務士はそれぞれの分野の専門家ですが、専門であるがゆえに対応できる分野は限られます。それに対して中小企業診断士はやろうとすればどんなことでもできる。勉強内容もMBAに近く、マネジメントに関する広い範囲の知識が学べる。自分に欠けているものを補うにはぴったりの資格だと思い、受験を決意しました」。2001年のことだ。
銀行の業務は財務や経済の科目内容に直結するので、仕事しながら試験勉強をしていたようなもの。さらに為替ディーラーをやっていた時に証券アナリストの資格を取得していたので、これらの分野は改めて深く勉強しなくてもある程度得点は見込めた。しかし、中には未知の分野もある。特に「マーケティング」と「情報システム」は、これまでまったく接点がなかった領域だ。限られた勉強期間で合格レベルの力がつくだろうか。菊池さんの中で不安が広がっていた。

浦野 創 取材の匠メンバー、中小企業診断士
千葉県出身、東京都在住。大学卒業後、新聞社に入社。広告、イベントなどビジネス部門に従事。1997年中小企業診断士登録。2004年から4年間米国(ニューヨーク)駐在。帰国後は主にデジタル分野でウェブ開発やデータ分析、イベントDXなどに携わる。2024年3月退職、同年4月株式会社ベイフィールド設立。独立診断士として活動を始める。個人情報保護士、上級ウェブ解析士。東京都中小企業診断士協会城西支部所属。
