【安井伸太郎さんインタビュー】診断士試験を経て成長できた伝える力

【安井伸太郎さんインタビュー】診断士試験を経て成長できた伝える力

【第3回 受験を通して得られたもの】
過去の記事:第1回第2回

安井伸太郎さんは鉄鋼商社に勤める企業内診断士だ。経営企画部という部門で、経営陣はもちろん、財務、人事、営業など多様な部門とつながり、会社全体を動かしていくのが仕事だ。2024年に中小企業診断士試験をストレート合格。第3回は2次試験と合格後について語る。

手書きの解答に悩まされる

1次試験を独学で乗り切った安井さん。2次試験対策として、主に過去問題集と「ふぞろいな合格答案(同友館)」シリーズを活用した。自己採点と振り返りを繰り返し、課題をあぶり出した。2次試験は、普段の実務では口頭で行われることが書面で与えられる。そのため限られた時間内に手書きで解答することには苦労したという。内容は理解できたが、自分の考えを紙に落とすと点数が伸びなかった。自己採点で40点に届かなかったこともあった。当初は、解答はパソコンで打ち込み、間違っていたら消去するという形で勉強していた。後半になり、本番対策として紙に鉛筆で書き始めてからは、時間管理の厳しさを実感した。日々数字を扱いIR対応もこなす安井さんだからこそ、慣れるのに時間がかかった。「ゴールをイメージしてから動いたほうがいい」と当時の自分にアドバイスしたいそうだ。

相手の立場を考えて伝える

模範解答と自分の解答のズレにも悩まされた。財務は内容を理解していた分、なぜ点がとれないのかが余計にわからなかった。「自分の解答のほうが正しいのではないか」と思うこともあった。しかし、過去問を解き、出題傾向について知識が蓄積されてくると、問題の奥にある経営者の姿が見えてきた。自分の解答を経営者に見せたとしたら、経営者は納得するのだろうかと考えた。すると、理論だけを優先しており現場をわかっていないと見えるかもしれない、と反省できた。逆に模範解答の解説を読むことで、より経営者に伝わりやすい方法があるようにも感じられた。

実務でも、営業の現場から「理論的なことはわかったが、結局私たちは何をしたらいいのだ」と言われることがある。納得感をもって受け取ってもらえるように、伝える力が欲しいと考えた。

試験を通じて得た最大の成果は「相手の立場を考えて伝える力」だった。これは業務にも大きく影響した。かつて安井さんには、営業の人とはわかり合えない、というイメージがあった。見ている世界が深い部分では違いすぎる、と以前ならフタをしてしまって諦めたりしたところがあったという。しかし試験の解答と自分の解答の違いは、そのまま現場と企画管理側の違いなのかもしれない、と思うようになった。

「今は、相手が何に困っているのだろうと考えるようになりました。しっかり相手の話しを聴くことで、相手のことを理解できるし、歩み寄れるようになった。そんな気はします。」

未来へ向かっての挑戦

安井さんが広げていきたい学びの領域は、人事の分野だ。納得感や公平感のある人事制度を作ることは難しい。人事評価制度に納得感が感じられなかったことは、前職を辞めた理由の1つにもつながっている。経営企画部として業績評価にかかわる仕事をしているからこそ、大切であると感じているのだろう。最近では人事関連の研究会に参加するなど、ネットワーク作りにも積極的だ。異業種の人々と話し、刺激を受けているという。

最後に、中小企業診断士を目指す人へのメッセージを尋ねた。 「診断士試験は難しい。いろいろなことを広く浅く知っていますが、直接的に仕事にプラスに働くような場面は、それほど多くはないかなと思います。ただ、やってみたいことがあるのだったら、世界も広がるし、いろんな人とも出会える。魅力のある資格だと思うので、ぜひがんばって欲しいです」








永岡 伸一

永岡 伸一 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1974年生まれ。埼玉県出身。東京都在住。大学で経済学を学び、卒業後に金融機関に入社。法人および個人営業担当。全国各地の企業オーナー、地権者などを中心に、資産運用コンサルティング提案に従事。証券アナリスト。1級ファイナンシャルプランニング技能士。宅地建物取引主任者。2020年中小企業診断士登録。

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