【第2回 中小企業の支援で大切にしていること】
過去の記事:第1回
前回に引き続き,渡邉奈月さんにお話を伺います。どのような思いで診断士として経営者と向き合っているのか,詳しくお話を伺います。
中小企業のホームページ作成支援をしたい
――ホームページの作成のセミナーを売りたいと思ったのはなぜですか?
ピアノ講師の友人から「IT会社に勤めているなら,ホームページ作って」と言われたんですよ。経験はなかったんですけど,無料サービスを組合せて簡単に作れたんです。経営者と話をしていると思いや事業アイデアがふわふわしている方も多いんです。でも,ホームページを作るときは思いを具現化しないといけない。例えば,メニューをどうするか考えて作ってもらうと,ご本人の意思がちゃんと入ったものができるんです。今はネットがない購買活動はないので,ホームページに向き合わない会社は先が難しいです。
公的支援の現場で求められるのは,すぐできて,その場でできて,しかもお金のかからないもの、ホームページ作成はぴったりです。
――ホームページを変えると効果はありますか?
ホームページを更新する企業は特に効果が出ているんですよ。例えば,同じ規模のダンス教室のホームページでは,毎月更新してInstagramで発信している教室は,ほとんど更新していない教室の3倍のアクセスがありました。
経営者のやりたいことを大切にする
――企業支援をするうえで,大切にしていることはありますか?
相手のやりたいことを曲げてまでは提案をしないことですね。
例えば,飲食店の経営者の話です。「食べログとかで認知を広げたくない,うちは隠れ家がコンセプト」という一方,「新規顧客を獲得したい」と矛盾があることを経営者に言われました。そのときに,WEBに抵抗感あるのかなと推測して「チラシはどうですか?DMは?」と探り探り提案しました。
――それでも,経営者を説得することもありますか?
ある企業に月次決算の作成を提案したときに「めんどうくさいし,何の意味があるの?」と言われました。でも説得して作ってもらい,こちらでグラフで見える化しました。そうしたら「傾向が見えていいね」,従業員とも共有して「意識も共有できるようになってよかった」といわれました。
とはいえ,頑なに拒否される時は無理強いしないようにしています。信頼関係がないと実行に至りませんので。
――信頼関係を築くうえで気を付けていることは何ですか?
まず,最初に相手の話をめちゃくちゃ聞きます。もし,面談の機会を3回いただけるなら,1回目は企業の良いところ,強みを探しながら,リスペクト,リスペクト,リスペクトの姿勢で聞くようにしています。
公的支援や窓口支援は短時間なので,どこまで入り込めているかと思うともどかしいです。信頼関係を築くのは今も課題です。
女性診断士ならではの需要
――女性診断士は少ないですが,女性だからこその仕事や困ることはありますか?
専門家として企業支援をしているので,女性だから困ることはないです。
一方,女性の研修講師需要は多いと感じます。女性講師を指名したいという話は,公的支援や企業の方から何回か聞いています。
那須 美紗子取材の匠メンバー、中小企業診断士
大学卒業後,証券会社で十年以上企画業務に従事。途中,出向にて信託銀行の業務システムのシステムエンジニアとして約2年勤務。その中で,システムや業務の新規構築・改善を幅広く経験。2019年に中小企業診断士登録。自身も3人の子供を育てながら働く経験を活かし,働く親の支援活動も実施中。趣味は旅行と茶道。