【第1回 診断士資格への挑戦と転機】

大手通信会社に勤めながら、2022年に中小企業診断士養成課程を修了した秋田謙作さんは、「養成課程がなければ僕、多分、中小企業診断士になってなかったと思います」と語る。学生時代から約25年を経て、一度は諦めかけた「診断士資格取得の夢」を実現させた。資格取得までの奮闘についてうかがった。
ダブルキャリアを生きる
秋田さんは、大手通信会社に勤務し、通信を支える設備計画・設備保全などをDXによって効率化し、最適な機能配置を図る業務に従事している。業務プロセス改革を行うスタッフ部門として、IT経営の実現のプロジェクトマネジメントを主導する立場にある。
また、中小企業診断士として、東京都中小企業診断士協会城東支部に所属し、地元の知人が経営している中小企業の補助金活用支援や協会の実務補習の副指導員、葛飾区の図書館セミナーなど幅広く活動を行っている。中小企業診断士を取得後すぐに、城東スキルアップコース(城東支部プロコン塾)に入会し、理論と実践で使える中小企業診断士の礎を築いた。また、東京都中小企業診断士協会中央支部のフレッシュ診断士研究会に入会し、プロの中小企業診断士としての在り方、常識、行動規範を学ぶなど精力的に中小企業診断士活動も行っている。さらには、中小企業診断士活動を通じて人脈が広がったことで本業にも良い影響を与えているという。
診断士資格への挑戦と転機
「それこそ、約25年前大学4年の時に就職活動がきっかけで中小企業診断士を取得しようと思いました」と秋田さんは、当時を振り返った。学生時代、秋田さんは、金融業界への就職を希望していた。金融業界は、中小企業診断士の資格を取得すると就職で有利だといわれており、大学を休学して勉強をした。当時は旧制度といわれる、商業部門、鉱工業部門、情報部門の3つの部門に分かれており、1次試験合格の有効期限はなかったという。秋田さんは1年間の努力の末、情報部門を受験し、見事に1次試験合格を果たした。その後、1次試験の合格実績が高く評価され大手通信会社に就職することになった。入社以後も2次試験の勉強は続けていたが、仕事に追われる忙しい日々を送る中で、次第に勉強が手につかなくなり、心残りを感じながらも時が流れた。
資格への再チャレンジ
その後、秋田さんは20年以上にわたり、大手通信会社での業務経験を積み、実践的な知識を身に付けていった。そして、社会人としての歩みを重ね、キャリアの折り返しを迎えた40代半ばに、「今の会社でのキャリアの目標を見失い、セカンドキャリアを真剣に考えた」と語る。セカンドキャリを考えたとき、今まで培ってきた業務実践の知識を経営理論で体系的に棚卸ししたいという思いが一層強くなっていった。そして、ビジネススクールに通いMBAを取得することを検討した際に、たまたま養成課程の存在を知り、入社時に取得を一旦諦めた中小企業診断士の資格に再チャレンジする決意を固めた。「これは運命だと思った」と感慨深い口調で語った。
徹底した受験準備
近年の中小企業診断士資格の人気の高まりを背景にして、養成課程の応募者数も増加傾向にある。選考方法も書面審査、小論文、グループディスカッション、個人面接など登録養成機関によってさまざまだ。一方で、具体的な選考方法の内容についての情報が少なく、準備が難しいとの声がある。秋田さんは、「情報収集には苦労しました。結局、養成課程に進んだと思われる方のブログしか情報源がなく、その少ない情報をもとに、面談やグループディスカッションの準備を進めました。面談の想定質問に対する回答準備、グループディスカッションの立ち振る舞いなど十分に検討しました」と語った。必ず合格するという強い意志をもって、登録養成機関を受験することにした。

鈴木 健一郎 取材の匠メンバー、中小企業診断士
岐阜県生まれ。デジタルサービス会社に勤務。経営管理スタッフとして、DXを活用した社内のプロセス革新を行う業務に従事。2024年3月、養成課程を修了し、5月に中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会城西支部に所属。特技は手相占い。