【第３回 マーケティングだけでない包括的な経営支援を目指して】
過去の記事：第１回、第２回
都内のマーケティング会社でシニアコンサルタントとして活躍する栗野将徳さん。「クライアント企業の本質的経営課題を解決したい」との思いから中小企業診断士試験に挑戦し、２年越しに見事に合格をつかみ取った。そんな栗野さんに、マーケティングと経営の知見を融合させた新たな企業支援の展望と、これから中小企業診断士を目指す人たちに贈るメッセージをうかがった。
中小企業診断士として見える新たな景色
中小企業診断士資格を手にした栗野さんの視界には、新たな景色が広がっている。これまでマーケティングの側面から企業支援を行ってきた彼が、経営全般を俯瞰する視点を獲得したことで見えてきた次の一手があった。
「今は独立を視野に入れています。中小企業診断士としての事業を立ち上げたいですね」と栗野さんは穏やかに、しかし確信を持って語る。合格から間もないにもかかわらず、すでに顧問契約をいただいているというから驚きだ。
「マーケティングをベースに話をいただいて、実際に顧問先の支援をさせていただいています。中小企業診断士という肩書きの信頼性も追い風になっていると感じます」
これまで栗野さんが現場で痛感してきたのは、マーケティング施策だけでは解決できない根本的な経営課題の存在だった。中小企業診断士の知識はその隔たりを埋めるものになりつつある。
経営課題の本質に挑む
栗野さんの最終的な目標は、当初から抱いていた本質的な経営課題の支援にある。マーケティング支援だけでは解決できない、ヒト、モノ、カネ、情報の課題に対応できる中小企業診断士になることだ。
「自分の今のバックグラウンドを振り返れば、人事面やバックオフィスの経験はまだまだ足りていません。そんなコンサルタントがいきなり組織や人事、資金繰りについてアドバイスするのはおこがましいだろうという認識は持っています。しかし、この資格取得をきっかけにしていけるとは思っています」
中小企業診断士として体系的に経営知識を習得したことで、クライアントからの信頼も得やすくなり、より深いレベルでの支援への道筋が見えてきたと語る栗野さん。
現実的なアプローチとして、栗野さんはまずマーケティングをフックにクライアントとの関係を築き、そこからのヒト、モノ、カネ、情報の課題に踏み込んでいく戦略を描いている。マーケティングと経営の知識を掛け合わせることで、より包括的なコンサルティングを可能にしたいと考えている栗野さんの目線は、常に未来を向いている。
中小企業診断士を目指す人へのアドバイス
最後に中小企業診断士を志す人へのアドバイスをうかがった。
「まず第一に、１次試験の勉強を４か月でやろうとしないでください」と笑う栗野さん。「私は運良く合格できましたが、きちんと計画を立てて、優先順位をつけて取り組むことが大切です。特に１次試験は７科目もあるので、戦略的・計画的に学習する必要があります」
２次試験については、「正解がないブラックボックスな試験ですが、確率論でみれば２回３回と回数を重ねることで受かる確率は上がります。心が折れないように、自分のペースで頑張ってほしい」とエールを送った。
「どうして中小企業診断士になりたいのか、初心を振り返りながら、たとえ落ちてもそれでも受験を続けていくんだという強い意志が大切です。最後まで諦めないこと。それが合格への近道だと思います」
マーケティングのプロフェッショナルとして培った経験に、中小企業診断士の知見を加えた栗野さん。彼の挑戦はこれからも続いていく。経営の現場で悩む多くの中小企業に、新たな視点と解決策を届けるために。
小山 剛史 取材の匠メンバー、中小企業診断士
1996年生まれ、愛知県名古屋市出身。2020年、地元名古屋市に本社を置くWeb系ベンチャー企業に入社。Webコンサルタントとして法人顧客のホームページ制作やWebサイト改善業務に従事するとともに、Web広告運用やSNSマーケティング支援まで幅広く担当。デジタルマーケティング領域のノウハウを蓄積しながら、中小企業のWeb活用による販路拡大や集客力強化に貢献。2025年中小企業診断士登録。愛知県中小企業診断士協会所属。
