【第3回 企業内診断士としての未来】
過去の記事:第1回、第2回
前回に引き続き,渡邉奈月さんにお話を伺います。今回は,企業内診断士だからこそ思うことを赤裸々に語ってもらいます。
企業内診断士だからこそ
――本業と診断士活動,それぞれで学んだことをどのように生かしてますか?
本業で得た知識やスキルはそのまま診断士活動に生きています。それは勤め先が中小企業というのもあると思います。
また,診断士の勉強では経営戦略から実務に詳細化する方法を学んだので,本業で資料を作成するときに意識するようにしました。それを,診断士活動でも「こうやって決めるんですよ」と伝えています。
――企業内診断士だからこそ大変だと思うことはありますか?
時間のやりくりでしょうか。企業内診断士もお客様からみたら診断士です。急ぎの場合は,昼休みにもメールの返信をしたりしています。
企業内診断士としての今後の活動
――今後,独立は考えていますか?
それは考えていません。独立する人は,決断力や細々とした作業などをめんどうくさがらずにやること,最後に身を切る覚悟を持ちそのストレスに耐え続ける力などがいると思います。それが、単純に私は向いていないなあ,と。
また,会社の中では入ってくる情報量が一人で仕事をする時より格段に増えます。自分のキャリアの中で知識やスキルを継続的に上げるために会社勤めはマストと考えています。
――今後はどのような診断士活動をしていきたいですか?
日本の生産性を考えると中小企業のマーケティングとITのリテラシーを上げることは急務だと思います。各企業にあうマーケティング手法やIT利用の支援は継続してやりたいです。あとは,研修や執筆を通じて,直接支援できない企業に対しても知見をお伝えしたいですね。
資格試験予備校の動画や執筆は,中小企業の支援ではありませんが,広く「ITもマーケティングもわかりやすいし、難しくない」というのを伝えたい思いが強いからやっています。
今のような感じで,可能な範囲で続けたいです。
企業内診断士のノウハウを生かしやすい環境へ
――企業内診断士の強みと活躍するためのカベは何だと思いますか?
中小企業の求めていることの一つは,企業内の方が知っていることをちょっと答えてくれることだと思うんです。
例えば,中小企業はまずデータ収集から始めないといけません。でも,データを可視化することは企業内の方が日頃やっていて、そのスキルが生かせると思うんです。グラフを作っただけで,魔法使いみたいに見られるんですよ。経営管理も同じです。
でも公的支援は,平日昼間に行くことが支援の要件です。情報のない地方の企業こそ本当に支援を必要としているのに,企業内診断士には難しいです。今は,Zoomやメールなどがあるので,企業内診断士が休日や夜間など隙間時間を利用して支援できる仕組みがあればと思います。
――企業内診断士に向けてメッセージはありますか?
もっと気軽に中小企業とコンタクトをとって,企業内の方がちょっと知っていることを支援すると,とても喜ばれると思います。企業内診断士仲間を増やしたいですね。
那須 美紗子取材の匠メンバー、中小企業診断士
大学卒業後,証券会社で十年以上企画業務に従事。途中,出向にて信託銀行の業務システムのシステムエンジニアとして約2年勤務。その中で,システムや業務の新規構築・改善を幅広く経験。2019年に中小企業診断士登録。自身も3人の子供を育てながら働く経験を活かし,働く親の支援活動も実施中。趣味は旅行と茶道。