【第1回 中小企業診断士に求められていること】
一般社団法人中小企業診断協会が実施したアンケート(※)によると,企業内診断士が独立をしない理由の第1位は「受注機会の獲得が難しいと思う」だそうです。しかしその一方で,次々と仕事を受けて活躍する診断士が多くいることもまた事実。どうすれば依頼の絶えない人気診断士になれるのか? その極意を,これまで数多くの診断士と共に仕事をしてきた米澤智子さんに伺いました。
(※)データでみる中小企業診断士2016年度版(一般社団法人中小企業診断協会)
http://j-net21.smrj.go.jp/know/s_hiroba/data2016/index.html
専門分野は必要だが,それ以上に重視するのは…
――現在のお仕事の中で,どのように中小企業診断士と関わっていますか?
中小企業を支援する公的機関の職員として,商店街支援を主に担当してきました。商店街やそこに所属する個店に対して独立診断士を派遣し,支援がうまくいくようにコーディネートする役割で,年間70件程度の案件を扱ってきました。
――派遣する独立診断士は,どのような基準で選定するのでしょうか?
まずはそれぞれの先生が強みとしている専門分野を中心に決めますが,その中で私が重視するのは「話を丁寧に聞ける人」です。
経営者の方って,いろんな悩みを漠然と抱えているんですよね。依頼される時点で課題が明確になっていることはあまりなくて。たとえば「販売促進に力を入れたい」というお話があったとしても,掘り下げていくとそもそもお店のコンセプトが固まっていないから販促手法がマッチしていない…といった具合に。
そうすると,ただ販売促進に強い人を送り込んでもうまくいかないんです。丁寧に支援先の話を聞いて,課題を解きほぐし,コンセプトの整理からできる人。特に初めて中小企業診断士の派遣制度を利用する支援先は,そこに気をつけています。
事業に関しては支援先のほうがプロ
――知識よりもまず先に,話を聞くことが大事?
私も中小企業診断士になりたての頃は,とにかくなにか助言しなきゃと思っていたのですが,実際に1年2年やってみるとそれは全然求められていなくて。
支援先に信頼される独立診断士は,もちろん助言もします。しかし,それよりも支援先に質問を問いかけながら悩みを整理することに多くの時間を割いていますね。
そこで診断士試験で学んだフレームワークを当てはめてあげると「ああそうすればいいんだ,じゃあやってみる」と支援先は自分で走り出してくれるんです。支援先が自分で納得して解決策を見つけているので,実行度も高いです。
逆に,事業やお店の運営に関しては支援先のほうがプロですから,素人の我々がどうこう言う立場ではないというのが,私が今までやってきて思うところです。
支援先に信頼される第一のポイントは「話を丁寧に聞く」こと。次回は,そのために必要なスキルについて教えていただきます。
田中 将統 取材の匠メンバー,中小企業診断士
1980年生まれ愛知県出身。法政大学卒業後,雑誌・WEB制作ディレクターを経て,現在はIT系企業にてマーケティングマネージャーを務める。専門分野はデジタルマーケティング,WEBサイト企画制作,セミナー・イベントによる集客施策立案など,オンライン/オフラインをミックスしたコミュニケーション戦略。また,チームマネジメントやITを活用した業務効率化にも積極的に取り組む。趣味は釣りとキャンプとBBQ。