【第2回 養成課程の入学までの道のりとカリキュラム】
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2022年に登録養成課程(以下、養成課程)を修了して中小企業診断士登録をし、2023年から独立開業をした上杉嘉邦さん。第2回では、養成課程入学までの道のりと養成課程のカリキュラムについて語ってもらった。
2次対策の沼にはまる前に脱出
上杉さんは1次試験を2年で合格し、2次試験も1回受験した。しかし、2次試験の勉強をしているときに他の受験生からの指摘でふと気がついた。
「2次試験の勉強をしていても、この解答は実現可能性が低いとか実践的ではないとか、本当に机上の空論だと思いました。結局この知識を身につけても本当に中小企業に聞こえるのかと言えば、私はそうではないと思いました」
また、2次試験の「沼」についてもこのように語った。
「私自身が試験に弱いというところがあったことと、いわゆる『沼』って言うやつがありますよね。2次試験に何度も落ちてしまうというタイプ。多分私はそちらのタイプに属する人間だろうという自覚が自分の中にあったので、2次試験は一発勝負と決めていて、ダメなら養成過程にいくということを2次試験受験前から決めていました」
時折交じる心地よい関西弁の中、切替えの覚悟や潔さが伝わってきた。上杉さんは初の2次試験に不合格になったことで、2次試験合格ではなく養成課程に進むことに切り替えたのだ。
「やってもらえること」が実践的なこと
2次試験とは違う養成過程の魅力やメリットは何か。
「養成課程ではやはり実践的な内容を学べたことが良かったです。2次試験だと中小企業診断士として学んだ知識や理論が実践的ではないものもあったと思います」
2次試験は「試験」という枠組みの中で問題や解答が作成されるので、どうしても箱庭の世界から抜け出せないと言う。
「やっぱり机上の空論ってやつですね。 経営者はその経営の知識ではなく明日までに何をやればいいのかというところを1番求めているので、『明日何やるか。これをやります』を提示する必要があります」
企業の経営は教科書通りにはいかない。中小企業診断士として学んだ知識や理論がそのまま当てはまることはほとんどない。教科書の知識や理論より「経営者に納得してもらい、こちらが提示したことをやってもらうこと」が大事だと語る。
「経営者にはこちらが提示したものをやってもらわなければならない。『これをやってください』って言って、『嫌です。やりません』と言われたら、どんなに正しい知識や理論でも結局は何の役にも立たない。我々が提案したことをいかにやってもらえるか、そこが一番重要かなと思いました」
演習と実習の2つの軸
養成課程のカリキュラムには「演習」と「実習」がある。これはどの養成課程でも共通していると言う。両者の違いについて解説してもらった。
「演習は授業形式で、2次試験の内容をよりリアルに近いものにしたものです。講義とワークショップから構成されていて、企業の問題点や改善策をグループごとに議論しました。また、財務や流通、店舗経営などの知識を深めていくものもありました」
「実習は実際の企業にいき、経営不振の原因を探り改善策を多面的に考えていくものです。ですが実務補習よりも厳しい状況下の企業を担当することが多く、改善策の内容も明日から実践できるレベルの具体的なものが求められます。もちろんここでも『実際にやってもらえること』が重要になります」
診断士試験で言うと、演習が2次試験、実習が実務補習や実務従事に該当すると言う。しかし、決して楽なものではないと上杉さんは強調していた。

水村 聡 取材の匠メンバー、中小企業診断士
千葉県出身、京都府在住。関西大学会計専門職大学院を修了。現在は税理士事務所にて主に小規模企業向けコンサルティングを担当。2023年度中小企業診断士試験合格、2024年9月中小企業診断士登録。2024年度一発合格道場・タキプロ(共に15期)にて「サトシ」というハンドルネームで活動し、ブログ執筆や動画出演を担当。