日本生産性本部コンサルタント養成講座での「多忙な日々」を振り返ると、今では「贅沢な日々だった」と語る前田浩光さん。第3回では、前田さんがなぜ「贅沢」と思えるのか、そして、前田さんの将来の目指すべき姿についてお聞きした。
インストラクターからの言葉
経営診断実習には、日本生産性本部の経営コンサルタントがインストラクターとして同行する。インストラクターとなる経営コンサルタントは、日本生産性本部が受け付けたコンサルティング案件に日々向き合い、コンサルティングを行っている。経営診断実習では実習生を率いて診断先に赴く。自ら経営診断するわけではなく、あくまでも実習生が主体となって経営診断するが、そこに妥協は一切ない。受講生に対してダメ出しもある。
「インストラクターからは、『高い視座』と『最後まで当社の役に立とうという意思を持てたか』を問われ続けました。おかげさまでそうした姿勢は習い性となりました」
養成課程で得られた「贅沢」
前田さんは養成課程を振り返って、「贅沢な日々だった」と語る。その理由は「経営コンサルティングにどっぷり浸れたこと」と、「日本生産性本部の卒業生の人脈」にある。
ホテルに「缶詰」になってチーム全員で1つの会社のことを考え、インストラクターやチームのメンバーとさまざまな意見を戦わせる。経営診断実習の経験を思い出しながら、ケーススタディで新たな引き出しを作る。体力との戦いでもあった。インストラクターに間近に接することで、診断先に対してどのような姿勢で臨むのか、向き合うのかを知ることができたのはなかなかできない体験だった。
「受講料は決して安いとは言えない額ですが、費用以上の価値があったと思っています。インストラクターや他の受講生との向きあい方次第でより多くのことが得られ、成長することができます。卒業生の人脈は、この世界ではとても貴重な財産です」
前田さんの「これから」とその想いを込めた「言葉」
前田さんは個人事業主として「カタリスト経営事務所」という屋号を持っている。「カタリスト」とは「触媒」のことである。
「触媒とは、化学反応の際に、それ自身は変化せず、他の物質の反応速度に影響する働きをする物質のことです。私も経営者と社員の間に、それまで起こせなかった化学反応を起こさせる触媒のようなコンサルタントになりたい。そして触媒である私が去った後も、支援先の企業がうまくやっていけるようにするのが理想です」
その思いを屋号に込めている。もう一つ、前田さんがこだわり始めた言葉がある。それは「ナビゲーター」である。
「『目指すゴール』を設定するのは経営者です。ただ、『どのようにゴールへ向かうのか』については、道に迷いそうになった時には目指すゴールの方向を思い起こさせてくれて、一緒に考えてもくれる『ナビゲーター』の存在があってもいいと思うのです。『自動運転』ではなく、あくまでも『ナビゲーター』役としてのコンサルタントを目指しています」 前田さんが掲げる「カタリスト」と「ナビゲーター」。中小企業診断士には独占業務がなく、それは「仕事の内容がよく見えない」と言われるゆえんであるが、これら二つの言葉は中小企業診断士のあるべき姿を言い表す言葉かもしれない。
上塘 裕三 取材の匠メンバー、中小企業診断士
名字の読みは「かみとも」。鹿児島市出身。横浜市在住。大分大学経済学部経営学科卒業。2024年2月中小企業診断士登録。神奈川県中小企業診断協会に所属。大学卒業後、法人営業に35年間従事。現在は企業内診断士であるが、近い将来、独立診断士として活躍できるようスキルアップ中。趣味はGOLF練習場通い(コースは年3回程度)、日本史の本・TVの読書と視聴(大河ドラマは欠かさず見る)、色々なスポーツの日本代表を応援すること。